男性に知って欲しいフェムテラシー

女性の社会進出に寄与、男性や企業にも変化を促す

フェムテックの盛り上がりの背景には、「#Me Too」運動などをはじめとして、これまでタブー視されてきた女性が抱えていた課題や問題が可視化され、声を上げやすくなったということも影響しています。これまで、確たる理由もなく「仕方がない」と諦めてしまっていた、女性にとって当たり前の権利を、女性自身が求めていいと、テクノロジーの進化も追い風になっているでしょう。センサーなどのテクノロジーを活用することで、これまで数値化されてこなかった女性の体的データを手軽に記録することが可能になりました。それらのデータをもとに研究することで、より多くの課題解決へとつなげることもできるでしょう。今後は、フェムテック企業と医療機関や研究機関との連携がより重要になってきます。もちろん、データ取得における問題もあります。フェムテックに限らず、体的データ、とりわけ人に開示したくないデータをトラッキングすることは、データ流出や意図せず活用されるリスクもあるということ。セキュリティを始め、消費者自身がデータに対するリテラシーを高める必要も出てくるでしょう。

これらフェムテックの広がりは、女性の社会進出に大きく寄与しています。バイエル薬品の調査によると、月経困難症や月経前症候群(PMS)などよる経済的損失額は6828億円とされています。これらの課題を解決するだけでも経済効果は大きいのではないでしょうか。フェムテックという言葉だけを聞くと、女性だけのものであると感じてしまうかも知れませんが、そうではありません。例えば、生理があるのは女性だけではないからです。心と体の性が異なるトランスジェンダーの人々や、自身の性が従来の文化に当てはまらないジェンダー・ノンコンフォーミングの人々など、「女性」ではない人にも生理はあります。生理の期間、自分の性自認とは異なる違和感や不快感を体に持つこともあるでしょう。

そのため、先述した生理ブランドなどは「生理があるすべての人へ」と謳っています。妊活においても、女性だけの問題ではないでしょう。WHO(世界保健機関)によると、不妊の原因の約半数は男性にもあるといわれています。同性パートナーとの妊活もありえるでしょう。フェムテックが解決する課題は、決して女性だけのものではありません。日本国内においては、ジェンダー・ギャップ指数が121位とまだまだ低い現状がありますが、性差なく暮らし、働くためには、女性の課題を解決するだけでなく、男性や企業側も理解する必要があります。フェムテックが市場として広がり、女性が抱えてきた課題が認知されることは、性差の溝を埋め、結果として誰もが自分らしく生活する社会の形成に寄与するといえるでしょう。

PMS(月経前症候群)対策アプリ「ケアミー」がPMSに関する意識調査を実施

日本では生理のある女性の約70~80%が生理前に何らかの症状(PMS)があるといわれています。(*1)女性の健康課題は、決して女性だけの問題ではなく、男性も含めた社会全体でともに解決していくアプローチが必要であると当社は考えています。そこで、15歳から49歳の男性4,000人を対象にPMSに関する意識調査を実施しました。PMSを認知している割合や認知した方法、また男性もPMSで悩んでいる実態など、調査からは興味深い結果が得られました。今後も女性の健康課題に対して、女性自身の行動変容と男性の理解醸成を目指し、情報発信を続けていきます。
(*1)出典:日本産科婦人科学会公式サイト

●調査結果サマリー

・女性パートナーの有無により男性の認知度には4倍以上の差がある
・女性パートナーがいたことのある男性の43.2%がパートナーのPMSに悩んだ経験がある
・女性パートナーのPMSに悩む男性の91.1%がPMSを理解したいと考えている
調査結果からは、PMSを認知している割合や認知した方法、また男性もPMSで悩んでいる実態などがわかりました。とくに、女性のPMSで悩んだ経験があり、それを理解したいと考えている男性が多く存在するという結果は、女性の健康課題を男性に対しても啓発していくことの重要性を示しています。女性だけでなく男性にもPMSについての適切な情報を提供し、互いに理解を深めていくことが、社会全体のウェルビーイング向上につながると考えられます。

●調査概要

・調査期間:2023年11月27日~12月13日
・調査対象:15~49歳 全国の男性4,000名
・調査方法:インターネット調査
※構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しています。合計しても100%にならない場合があります。
※本調査結果は、広くご活用ください。データの引用・転載時にはクレジット「PMS対策アプリ『ケアミー』調べ」を明記していただくようお願いいたします。

●調査詳細

■女性パートナーの有無により男性の認知度には4倍以上の差がある
生理のある女性の約70~80%が生理前に何らかの症状(PMS)があるとされています。そのような中で、男性はPMSについてどのくらい認知しているのか。パートナーの有無によるPMSの認知度を調査しました。現在パートナーがいる男性の30.9%、現在パートナーがおらず、過去にパートナーがいた男性の15.6%がPMSを「知っている」と回答しました。一方で、現在も過去もパートナーがいない男性のうちPMSを「知っている」と回答したのは、わずか6.9%でした。女性パートナーの有無により男性の認知度には4倍以上の差があり、妻や恋人などパートナーの女性が身近にいるかどうかでPMSを知る機会に差があることがわかりました。

■男性はPMSの知識を女性パートナーから学ぶ
PMSを「知っている」と回答した男性はどのようにしてPMSを知ったのか。一番多かった回答は、「パートナー(恋人や妻)から教えてもらった(43.8%)」、2番目に多かったのは「インターネットやSNSで知った(34.3%)」であり、身近にいるパートナーや気軽にアクセスできるインターネットやSNSから情報を得ていることがわかりました。

■女性パートナーがいたことのある男性の43.2%がパートナーのPMSに悩んだ経験がある
これまでにパートナーがいたことのある男性のうち、43.2%がパートナーのPMSに「悩んだことがある」と回答しました。生理前のつらい症状に苦しむ女性はもちろん、PMSで悩む女性をパートナーに持つ男性もまた悩んでいるようです。

■女性パートナーのPMSに悩む男性の91.1%がPMSを理解したいと考えている
パートナーのPMSに悩んだことのある男性のうち91.1%が、パートナーのPMSに関連して起こる不調について「知りたい」と回答しました。実際にPMSで悩む女性が身近にいる男性は、PMSの症状への理解を望んでいることがうかがえます。

●調査に協力してくださった男性へのインタビュー結果

男性は具体的にどのようなことに悩んでいるのか。インタビュー結果の一部をご紹介します。

■独身男性(25歳)
彼女と同棲をしはじめてから、コミュニケーションで悩むことが増えました。いつもは仲が良いんですが、急に彼女が情緒不安になり険悪なムードになるんです。理由も良くわからず、急にイライラしたり、黙り込んだりするので、どう接したらいいのかわからず悩んでいます。女性特有のものかなとは思うのですが、きちんと理解したいと思っています。

■既婚男性(31歳)
生理のせいで気分のムラが起こるということはなんとなく知っているのですが、妻の情緒不安が生理のせいなのか自分からは聞きづらいです。話しかけると、余計に相手をイライラさせてしまう気もして…。たまにならいいんですけど、毎月のようにそんな時期があるので、ちょっと精神的に疲れてしまうことがあります。二人の関係性のためにも、本当は相手のことを理解して、自分にできることがあるならしたいと思っています。

●産婦人科医・高橋怜奈先生に聞く調査結果のポイント

PMS(月経前症候群)は女性だけの問題ではありません。男性のPMSの認知度が低いことも問題ですが、たとえPMSの存在を知っていても、パートナーへの理解や、どのように対応すれば良いのかわからないといった悩みを抱える男性は少なくありません。女性だけでなく、男性もPMSについて学ぶことで、互いを理解し、尊重する関係につながります。また、PMSには対処法や治療があります。PMSかもと思ったら、まずは婦人科でご相談ください。普段の生活のみならず、人生がもっと輝くものになるでしょう。産婦人科医監修の基礎知識も通知されるため、パートナーのPMSに対する理解も深まります。カップルの利用者にインタビューをすると、「PMSのことを理解したい」という理由で、男性から女性にケアミーを紹介したというケースも少なくありません。

【利用している男性(28歳)の声】
毎月、彼女が生理前になると、イライラしたり泣いたりすることが多く、どのように接すれば良いか困っていました。しかし、ケアミーを使い始めてからは、彼女の状態や対策方法をLINEでケアミーが教えてくれるので、スムーズにコミュニケーションが取れるようになりました。

【ケアミーアプリダウンロード】
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男子校での性教育

ファッション雑誌販売部数トップシェアの株式会社宝島社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:蓮見清一)は、10~60代の各世代の女性誌11誌、男性誌2誌の計13誌合同でフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう!Hello Femtech(ハローフェムテック)」を行っています。その一環として、2023年9月9日(土)に性に関する授業を、神奈川県横浜市の聖光学院高等学校で実施しました。スピーカーとなったのは、産婦人科医の高橋 幸子(たかはし・さちこ)先生と宝島社の女性ファッション誌「リンネル」編集部の柴田かおる。同校の1年生226名に向けて、性の多様性、避妊、妊娠、性感染症、セルフプレジャーなどについて、高橋先生よりお話していただきました。性感染症の解説では生徒20名が参加し、「性感染症広がるゲーム」を実施。生徒は、コンドームの必要性をゲームを通じて体験しました。
※性感染症広がるゲームとは、性感染症の広がり方が視覚的に理解でき、コンドームの必要性を伝えられる実験です。

①透明なコップを人数分用意する。一つのコップに無色透明の水酸化ナトリウム水溶液(感染源)を、残りのコップには水を1/3量ずつ入れる。コップを一人一個ずつ取り、ペアになる。
②自分のコップの水を相手のコップに全部入れ、半分返してもらう。この水の交換(性交渉)を、ペアを替えて一人5回行う。
③全員のコップにフェノールフタレインを垂らすと、約8割の人の水が赤く変化し、感染の状況がわかる。

~授業に参加した生徒の感想を一部紹介~

・世間でタブー視されている性に関することについて躊躇なく話していただいて非常に参考になった。
・男女が互いに知識を持って、同意があることが重要だと感じた。
・あやふやな情報がはびこっている中、日頃聞くことが難しいことを聞けて良かった。
・避妊をすることが男性として当たり前のマナーだということがわかった。
・性感染症の恐ろしさに気づけて良かった、保健所で検査できることも知った。
・性についての話はデリケートだが、向き合わなければならず、オープンに話し合わなければいけない。
・この先の人生に関わることであり、真剣に考えたい。普段の授業では学べないことを学べた。
・妊娠、性感染症のリスクや、もしものときのことなど、絶対に知らないといけないことばかりで集中して聞くことができた。
・性行為や避妊の仕方、女子の月経に対する理解を深めることができた。
・普段知ることができない他人には聞けないようなことを、伝えやすい雰囲気をつくって教えてくれるのはとても貴重だと感じた。
・日常ではタブーにされがちな話題だが、もっと公に、タブーでなくなるべきだと思う。
・パートナーを尊重し傷つけないために、性に関する正しい知識を身につけ、実践することが大切で、当たり前のことだと感じた。
・このような性教育の機会を通じて、正しい知識を得ることは、すべての人に必要不可欠だと感じた。
・(授業で笑いが起きた場面では)先生が意図して笑いをとろうとした内容で生徒は笑ってもいいと思うが、先生が意図していないところで生徒が笑うのは良くないと思った。
・性の話題が嘲笑の対象になるということは、小さいころからの教育が足りない表れ、教育が行き届いていないからだと感じた。

学生のころから、正しい知識をつければ、性別に分け隔てなく互いを尊重することができると思います。フェムテックが日本の文化になることは女性活躍社会の実現だけでなく、社会問題であるlgbtqやハラスメントにも効果があると考えます。

メンテックとは

●メンテック

「Man(男性)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、男性特有の健康に関する悩みや体に関する悩みを解決するための製品やサービスを指します。同じ意味として、「Male(男性)」と「Technology(テクノロジー)」を合わせたメイルテックと呼ばれるケースもあります。フェムテックは世間でも広まりを見せていますが、メンテックに関しては「わからない」「詳しい内容は知らない」といった方もいるはずです。メンテックが生まれた背景としては、男性特有の機能の衰えや健康の衰えを感じる人が増えているからだと考えられます。女性だけではなく、男性にも人にはいえない悩みは多いので、今後もフェムテックだけではなくメンテックに関する製品やサービスが冷えていくと予想できます。

●男性特有の健康問題とは

メンテックとなる男性特有の健康問題には、どんな種類があるのでしょうか。代表的な症状をご紹介していきます。

■ED
EDは不全とも呼ばれ、性行為をしようとしても十分な効果が得られない場合や維持できない状態が続く様をいいます。おもな原因には、以下の項目が挙げられます。

・加齢
・糖尿病
・肥満
・高血圧
・喫煙

このほかに、ストレスも原因の一つです。性交が上手く行かなかったことによるプレッシャーを始め、仕事でのストレスもEDを引き起こす可能性があります。治療法としては、原因となっている病気の改善やストレスの解消が当てはまります。また、ED治療薬もあるので服用をして改善を目指す方法もあります。しかし、どの方法も病院への受診が必要となるため、仕事で忙しい場合は通うことは難しいです。EDともなれば、「受診をする勇気がない」「バレたら恥ずかしい」といった思いもあり、受診せずに放置をしてしまう男性も中にはいます。

■男性不妊
子づくりをするために性交渉をしても自然に授からない状態を、不妊といいます。不振症は女性に原因があると考える方もいますが、WHOの調べによる不妊原因の男女比は以下の通りです。

・女性:35%
・男性:15%
・男女ともに:24%
・原因不明:11%

不妊カップル全体の48%で男性が関係していることがわかっています。男性不妊の原因としては、造成機能障がいや性機能障がい・精路閉塞障がいの3つに分類されます。原因を調べるためには、精液検査や超音波検査、血液検査、性感染症検査などを実施する必要があるので、EDと同様に病院の受診が不可欠です。

■薄毛
薄毛で悩む男性も多いです。薄毛の原因としては、偏った食生活や生活習慣、睡眠不足やストレスなどがありますが、男性ホルモンや遺伝が要因となるAGA(男性型脱毛症)であるケースも高いです。AGAは20代や30代といった若さの男性で発症し、年齢が上がるにつれて症状が進行していきます。AGAを治療する方法としては、薬の服用です。AGAの要因とされているジヒドロテストステロンと呼ばれる男性ホルモンの一種を阻害するために外用薬や内服薬を用います。医師に相談し、処方が必要となるので病院への受診が必須ですが、やはりほかの健康問題と同様に受診をして治療を考える男性は少ないです。

●メンテックに関連する製品やサービスは増えつつある

男性特有の健康問題に対処するためには専門的な知識を持つ病院を受診し、適切な治療を行うことが大切です。しかし、長期間受診をし続けることが難しい、受診が恥ずかしい、人に知られたくない、といった理由から病院へ行かずに治療を断念する男性は一定数います。こうした問題を解決するためにメンテックに関連する製品やサービスが近年増えてきています。自宅で検査ができるだけではなく、医師とのオンライン診察も可能で、サプリメントの処方や凍結保存といったサービスも実施しています。同じくアメリカの企業ヒムズ&ハーズ・ヘルスでもHimsと呼ばれるブランドが立ち上げられ、男性特有の健康課題を解決するためのサービスを提供しています。

オンラインでの診察や薬の処方を受けられ、同社が手掛けた製品は一見コンプレックス商材だとは思えないような高いデザイン性が魅力です。見た目から「治療をしていることがわからない」製品を提供しているため、利用しやすい点がメリットです。インドにあるKindlyでも、郵送し検査をしてくれるサービスや遠隔診療、サプリの配送提供などを実施し、性に関する悩みをサポートしてくれる会社があります。郵送検査はテストリリース後、4ヶ月という短期間で3,000個もの売り上げを達成したようなので、インドでもメンテックの需要が拡大していることがわかります。また、薬用シャンプーや発毛剤の開発で知られる株式会社アンファーは、ウェルネスブランドとしてHOMTECHを立ち上げました。妊活サプリメントや妊活プロテイン、性欲や力に特化したドリンク剤などを「妊活を女性だけのものにしない」という合言葉のもとで開発しています。株式会社SQUIZでも、EDやAGAといった男性特有の悩みをオンラインで相談し、診察・処方まで実施してくれるサービスのOopsを提供しています。

●「おじテック」にも注目しよう

メンテックに関連する製品やサービスは徐々に増えつつあります。そんな中、「おじさん」と「テクノロジー」を掛け合わせた「おじテック」を呼称する企業も現れ始めています。男性の中には尿漏れに悩む方もいます。食生活による肥満やホルモンバランスの変化、加齢といった要因で尿トラブルは発生し、「追っかけ漏れ」といわれる排尿後、自分の意志とは関係なく尿が垂れてしまう症状で悩む男性も多いです。老化による筋力の衰えや肥満がおもな原因ですが、こうした悩みを持つ男性の多くは通常の下着を着用して過ごしています。
そんな中、クロスプラス株式会社が開発した製品が尿漏れ対策用のボクサーパンツです。吸水生地や防水布を使用してつくられたパンツで漏れをガードしてくれます。ナノファイン加工もされているため、不快なニオイも気になりません。また、従来の尿漏れパンツとは違いデザイン性も高く、通常のパンツと同じような見た目をしているため、周囲に尿漏れパンツを着用していることもバレません。このほかにも、株式会社TOKIMEKU JAPANによるケアブランドのメロウスタイルでは、尿漏れパンツのほかに尿漏れパッドも提供しています。20cc、80cc、200ccと吸水力の異なるパッドが用意され、自分に合う製品を購入できます。

フェムテックの男性版ともいえるメンテックは、男性特有の健康問題を解決するための製品やサービスを指します。メンテックも、フェムテック同様に今後さらなる拡大が予想される分野です。女性もメンテックに関する知識を習得すれば、パートナーや家族の悩みに寄り添えるかも知れません。男女ともにある健康の悩みについて認知が進み、相談できる環境が広まる世の中が期待されています。

不妊の原因は男女半々

●まず第一に、不妊の原因とは何なのでしょうか?

「不妊治療」というと婦人科系の疾患や女性側の加齢の問題などが想起されがちですが、その原因は男女半々であることが近年の研究で明らかになってきました。ここでいう不妊とは「避妊なしの性交を1年間行った際の妊娠の不在」と定義されます。日本生殖医学会の調査によると、不妊の原因は「女性のみ」が41%、「男性のみ」が24%、「男女両方」が24%となっており、48%(約半数)が男性にも原因があるとされています。

女性の不妊症の原因には、「排卵因子(排卵障がい)」、「卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)」、「子宮因子(一部の子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)」、「頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)」、「免疫因子(抗抗体など)」などさまざまなものがあります。日本生殖医学会によればこの「排卵因子」、「卵管因子」に「男性不因子」つまり男性の不妊症を加えた3つが不妊症の3大原因といわれています。男性の不妊症の原因はおもに、①造精機能障がい、②性機能障がい、③精路通過障がいに分類されます。

こうした男性不妊原因のうち約8割は「造精機能障がい」だといいます。わかっている中で、最多の原因は精巣の静脈に血液が逆流して陰嚢部にこぶのようなものができる「精索静脈瘤」で、これは手術により改善が見込まれます。さらに、女性側の加齢にともなう卵子の質の低下と同時に、デンマークの研究結果によれば30歳男性と45歳男性を比べた場合では妊娠率が20%も低下することが証明されており、加齢とともに高まる不妊のリスクは男女どちらにも共通しているといえます。

●仕事と両立ができずに一方を諦めた人は約3割

厚生労働省の調査結果によると、仕事と不妊治療の両立が困難を極め、不妊治療をしたことがあるもしくは予定している労働者の中で「仕事と両立している(または、両立を考えている)」と回答した人の割合は53.2%ですが、「両立できず仕事を辞めた」「両立できず不妊治療を辞めた」「両立できず雇用形態を変えた」と答えた人の合計は34.7%となっています。またこのうち、実際に離職を経験した患者は16%に上りました。離職の直接的な原因としては精神的な負担の増加、そして頻繁に通院する必要性などが挙げられています。

企業側や同僚の不妊治療に関する認識や理解が深まっていないために、支援の体制整備自体が進んでいないという問題も指摘されています。日本では生殖補助医療で生まれる子どもが年々増加の一途をたどる一方で、不妊や不妊治療の実態については未認知なのが現状です。女性がキャリアを犠牲にすることなく妊娠・出産できる社会・制度づくりも大切ですが、同時に男性が不妊症だと判明した場合にも、度重なる治療と仕事とを両立できるよう支援していくこともかかせません。

2012年からのWHOの調査グループが行った研究結果をもとに2017年に発表されたオックスフォード学術雑誌の報告書によると、現状改善のためには男性・女性ともに不妊を疾患として認知し、企業や政府、市民が一体となって社会全体で取り組んでいく必要があると提言がされています。

社会の取り組みが不足しているためにファミリープランニングと仕事との両立が難しく、どちらかを諦めざるを得ない人を生み出してしまう状況にあるといえます。男性も女性も、一人ひとりが希望する選択を叶えられる社会の実現が望ましいと思います。

妻の更年期に、夫はどう寄り添えばいい?家庭不和に陥らないために

日本人女性が閉経する年齢は、48〜52歳が多いそうです。その前後5年(つまり10年)程度の期間を「更年期」と呼び、さまざまな心身の不調をともないます。どんな症状があるの?対策は?家族はどう寄り添えばいい?それらをまとめてご紹介します。

●大きな病気が隠れているケースも

更年期にはたくさんの症状があると聞きます。人によって症状は異なりますが、疲れが取れない、記憶力が落ちたなどのベースがある中で、ほてり、発汗、めまい、耳鳴り、動悸、ひどい頭痛、関節や指のこわばりなどの症状が見られます。ほかにも落ち込みや、やる気が出ない、など精神的な症状も多く、本当にさまざまです。
「やる気が出ない」なんて感情の誤差だし、これを本人が「更年期の症状だ」ととらえるのは難しいのでは?これらの症状は、「年齢のせい」で済ませてしまいがちです。ですが「更年期かもしれない」と気づくことで、病院に行く選択肢が出てきます。更年期症状ではなく、病気が潜んでいる場合もありますので注意が必要です。更年期と思いきや、リウマチや、メニエール病などが見つかるケースもあります。何らかの症状が出たら、「歳のせい」で片付けず、まずは該当症状の科で検査することをおすすめします。そこで大きな問題がなければ「更年期なのかな?」と安心したうえで、対策をするといいと思います。

●更年期障がいの治療は?

女性ホルモンのバランスを診るために、血液検査をします。その数値を見て、生理周期や体重、症状など、あらゆるカウンセリングで判断されます。ホルモン補充療法(HRT)でエストロゲンを補い、更年期障がいを改善する治療法が一般的です。HRTに使用される薬には内服薬と経皮薬(貼り薬、塗り薬)があります。ピルもそうですが、女性ホルモンの投与は血栓症のリスクがあります。不調の原因が更年期のせいだと認識できて、治療法がわかると、心の負担も軽くなる可能性があります。大きな病気でないことがわかれば「更年期なんだ!それなら上手く乗り越えていこう」という気持ちになれると思います。自分だけじゃなく、ほかにも同じような症状の人がいるんだ、と思えるだけでも全然、気持ちが違ってきます。

●「子宮脱」の対策は?

出産や加齢で骨盤底筋群にある筋肉が衰えると、子宮が下がってきてしまいます。「お風呂に入ってるときに何か違和感があって膣のあたりを触ってみたら、子宮に触れちゃった」という事例もあります。骨盤底筋も筋肉なので、放っておくと緩んでいく一方なんですよ。子宮脱で手術に至るのは4人に一人くらいの割合ですが、筋肉が衰えて、子宮が下がってきている人はもっと多いです。骨盤底筋群を鍛える体操があります。いわゆる「膣トレ」と呼ばれているものです。コツを覚えるまでは大変ですが、日頃から鍛えておく必要があります。子宮脱のほかにも、頻尿や尿漏れなどの症状も出てきますので、骨盤底筋を鍛えることはとても大事です。

●仕事が続けられないほど、追い詰められる更年期

40代、50代はとくに自身の更年期と、親の介護などが重なる年齢です。人間一つのストレスなら何とかなるかも知れませんが、同時に2つも3つも重なると抱えきれなくなるかも知れません。それで「仕事を辞めました」という方もいらっしゃいますし、体調が悪いからといって本当に仕事を辞めてしまっては、更年期にかかる年齢で復職するのも簡単ではありません。一人で抱え込まず、パートナーや第三者と相談することも大事だと思います。またパートナーも決めつけずに話を聞くというのも大事なことです。

●放っておくと、家庭不和に陥るケースも

更年期そのものが原因というより、更年期によって、今まで我慢できたものへのストレス耐性が落ち、家族を優先して自分を後回しにしたり、長年我慢をしたりしている女性は多いと思います。更年期にうつっぽくなるなど精神的な症状もあります。でも「私がしっかりしなきゃ」と精神的にさらに追い詰められることもあるそうです。家族が「お母さんは性格に波がある。そういうもの」、と片付けてしまうと、躁うつの気があるのに、本人も家族も気づかないまま症状が悪化してしまうことがあります。

●家族はどう寄り添うべきか

男性は、妻の更年期にどう寄り添えばいいのでしょう?度を越えて不安定だと感じたら、異変に気づいてあげて、病院に行くように背中を押してあげてください。あとは「ふんふん」と相づちを打ち、相手の話をしっかり聞いてあげる。パートナーの話をしっかりと聞いてあげることはかなり大変だと思います。人間関係は上手く距離を取ることも大事なので、お互いに自分だけの時間を持つことも意識するといいと思います。そして互いに心に余裕が生まれると、しっかりと向き合えるようになるかも知れません。夫婦といえど、お互いにとってちょうどいい距離感を保つのも大事なことといえます。結局、コミュニケーションなんですよね。女の人は良く「察してよ」というけれど、相手も疲れていたら、常に察するなんて無理なことです。体調管理は、忙しい・忙しくないで考えるレベルのものではありません。自分がいっぱいいっぱいのとき、自分がそういう状況であることすらわからなくなってしまいますから。でもそれが燃え尽きたときに、「大変なことになってる」と初めて気づいたのでは遅いと思います。そうなる前に「少し休んだほうがいいんじゃない?」と声をかけてあげられたら理想的です。家事育児の分担も大事ですし、病院に行く後押しもしてあげてください。

●更年期は家族とシェアする時代へ

女性の更年期障がい。この言葉は、男性の理解からもっとも遠いものでした。何しろ男性には生理がありませんし、ホルモンバランスの揺らぎによる精神的な波も、女性に比べれば緩やかです。家族内で家事育児のバランスを見直してみる。男性は今まで以上に積極的に、パートナーの負担を減らすように心がけた方が良いと思いますし、日頃からパートナーの様子を気にかけて、もしも心身の不調を察したら、受診をすすめてあげましょう。更年期は家族ごとの問題です。そんな意識のアップデートが男女ともに必要だと思います。