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月経・PMS

ピルについて

●生理を移動する(早める、遅らせる)には

■ピルを服用する
婦人科でピルを処方してもらい服用することで、生理期間を移動させることができます。生理期間を移動する場合、「生理を早める」「生理を遅らせる」という、2つの選択肢があります。どちらも期間をずらしますが、ピルの服用タイミングに違いがあります。それぞれの方法を説明します。

■生理を早める場合は、一つ前の生理期間から準備
生理を早める場合は、イベントに重なりそうな場合、予定より早くくるように調整します。具体的な方法は、ずらしたい生理の一つ前の生理が始まった3~5日後から、10~14日間ほど、ピルを服用します。服用を止めると2~5日ほどで生理がきます。
・生理を早める方法のメリット:早めに生理がくるので、イベントの期間に薬を飲む必要がない
・生理を早める際の注意点:ずらしたい生理の一つ前の生理中に受診する必要がある。そのため、一つ前の生理が終わっている場合は、生理を早めることはできない。

■生理を遅らせる場合は生理開始予定日の3日~5日前から服用する
生理を遅らせたい場合は、イベントに重なりそうな期間よりあとに、生理がくるように調整します。具体的な方法は、生理予定日の3~7日前から中用量ピルを服用し、イベントが終わるタイミングまで服用します。服用を止めると2~3日ほどで生理がきます。
※生理予定日の3日前からの内服で生理を遅らせられることが多いですが、生理がズレて早くくると失敗してしまうことがあります。余裕を持って生理予定日の5~7日前からピルを内服するのがおすすめです。
※妊娠の可能性があるときはピルを飲まない方が良いため注意してください。

・生理を遅らせる方法のメリット:生理予定日の1週間くらい前でも、生理期間をずらせます。
・生理を遅らせる際の注意点:大事なイベントのときにピルを飲む必要があります。吐き気やだるさなど、ピルによる副作用が出てしまった場合、大事なイベントのときに体調不良になる可能性があります。病院によって方針は違いますが、生理を遅らせる方法は大事なイベントの期間に、副作用のリスクがあることから、生理を早めることをすすめられることが多いようです。また、生理周期が不規則な人の場合、生理移動ができない可能性もありますので、詳しくは婦人科の医師に相談してください。生理痛が重い人は、普段から低用量ピルを定期的に内服することで、生理痛の緩和にもつながり、生理期間の移動にも使うことができます。

■生理日の移動(早める、遅らせる)にかかる費用や注意点
生理の移動をする場合は保険適用外となり、費用は病院によって違いますが、2,000~4,000円ほどです。処方されたピルは、決まった期間飲み続ける必要があります。飲み忘れがないように、「朝に歯磨きをしたあとに飲む」など服用のタイミングを決めたり、アラームをセットしておいたりするといいでしょう。もし、服用を忘れてしまった場合、24時間以内に気づいたときはすぐに1錠飲み、次の服薬時間にいつも通り1錠飲んでください。24時間以上経ってから飲み忘れに気づいた場合は、前日と当日分の2錠をすぐに飲み、翌日以降はいつもの服薬時間に飲んでください。2錠以上飲み忘れがあると生理がくる可能性が高くなりますので、飲み忘れに注意しましょう。また、3錠以上は同時に飲まないようにしてください。また、低用量・中用量ピルを服用すると、血栓症のリスクが少し上がると報告されています。もし、ピルを服用しているときに、強い頭痛やふくらはぎの痛みや腫れなどの症状が出た場合は、すぐに服用を中止して医師に相談してください。大事なイベントに生理が重なるかもしれないと思うと、ちょっと憂鬱な気持ちになってしまいますよね。調整期間も鑑みて、日程に余裕を持って産婦人科へ相談してみるのがおすすめです。

生理でお腹が痛い…!腹痛の原因と対処法

●生理中にお腹が痛くなる原因

生理中にお腹が痛くなる原因は、プロスタグランジンが原因であることが多いです。プロスタグランジンは体内でつくられる物質でさまざまな作用があります。作用の一つとして、生理の経血を子宮から排出するために子宮を収縮させる働きがあるのです。また、プロスタグランジンは子宮以外の胃や腸などの臓器の平滑筋を収縮させる作用があるため、胃痛や胃のむかつきや吐き気、腹痛や下痢などの症状が出る人もいます。

●日常生活に支障がある場合は月経困難症の可能性も

生理時の体の不調が強い場合は、「月経困難症」と呼ばれます。月経困難症は原因によって以下の2つに分類されます。

■機能性月経困難症
機能性月経困難症とは、病気などの原因はないにもかかわらず、生理痛が重い状態を指します。子宮を収縮させるプロスタグランジンが過剰分泌され、若くて子宮が未発達(子宮の入り口が狭い)であるために経血が排出しにくいことが原因で起こります。

■器質性月経困難症
器質性月経困難症とは、子宮や卵巣に関連する病気が原因で、生理時に痛みを感じている状態です。以下のような病気の可能性が考えられます。
・子宮筋腫:子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍のことです。何らかの原因で子宮内の筋肉が異常増殖した状態です。症状としては、下腹部の痛みのほか、貧血や不正出血などがあります。
・子宮内膜症:子宮内膜症とは、本来は子宮の中にあるはずの子宮内膜組織が、卵巣や腹膜などに発生してしまう病気です。周囲の組織と癒着するため、生理痛のほか腰痛や排便痛などの痛みがあります。
・子宮腺筋症:子宮腺筋症とは、子宮の壁である筋肉(子宮平滑筋)に子宮内膜やそれに似た組織ができてしまう病気です。生理のたびにその組織から出血を起こすため、生理痛を引き起こしたり、経血量が多くなる過多月経の原因となったりします。

●自分でできる生理中の腹痛の対処法

生理中の腹痛を緩和するには、お腹を温めて、プロスタグランジンの過剰分泌を抑えるのが良いとされています。

■生理痛を和らげる市販薬を服用する
腹痛がつらいときは、我慢せずに生理痛を和らげる市販薬を服用しましょう。薬が効くまでには約30分かかるため、痛くなってから鎮痛剤を服用するのではなく、痛みを感じそうだと思ったら早めに服用しましょう。また、痛み止めのロキソニンやボルタレンは、プロスタグランジンの分泌を抑える作用があり、生理痛への効果が高いと言われています。ただし、服用する頻度が高いと胃に負担がかかり、胃痛や胃潰瘍の原因になります。胃痛がある人は、アセトアミノフェンなど胃に負担をかけない痛み止めを使うのもおすすめです。

■お腹を温める
薄手の腹巻きやカイロ、ブランケットなどでお腹を外側から温めることで、生理痛の痛みが和らぐと言われています。

●婦人科を受診したほうがいい目安、治療

市販の痛み止めを飲んでも効果がなく、何日も腹痛が続いたりする場合は婦人科を受診しましょう。婦人科では、問診や検査を行って、医師が腹痛の原因を診断します。

●機能性月経困難症の治療

プロスタグランジンの過剰分泌が腹痛の原因だった場合は、以下のような治療を行います。

・薬物治療:非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID:ロキソニンなど)を服用して、痛みを引き起こすプロスタグランジンの分泌を抑えます。
・低用量ピルを服用する:月経困難症の治療薬として、LEP(低エストロゲン・プロゲスチン配合薬)というピルを服用することもあります。LEPを使うと生理痛や経血量を減らせます。子宮内膜を厚くなりにくくする作用もあるため、プロスタグランジンの分泌量も少なくなることが多いです(月経困難症の治療を目的にLEPを服用する場合は保険が適用されます)。

●器質性月経困難症の治療

腹痛の原因が器質性月経困難症だった場合は、根本原因となっている病気を特定し、治療を行います。子宮内膜症の場合は、痛みをコントロールする女性ホルモン剤や低用量ピルの服用をすすめられることが多いです。外科的療法としては、病変部のみを取り除く方法と子宮や卵巣を摘出する方法があります。妊娠の希望や再発のリスクなどを考慮して治療方針を決めていきます。
※生理痛のうち、腹痛を感じる人は多いです。生理中にお腹が痛いときは、我慢せずに痛み止めを服用しましょう。市販の薬が効かない場合や、日常生活に支障が出るほどの痛みがあった場合は、婦人科を受診してください。

生理周期が早いのは大丈夫?正常な生理周期と頻発月経の原因

●正常な生理周期や生理日数

正常な生理周期は24日~38日で、生理の持続日数は8日以下とされています。ただし、思春期や更年期の女性はホルモンバランスが揺らぎやすいため、上記の範囲内に収まらないことも。とくに更年期にさしかかる年齢になると、卵巣の機能が低下してくるため、生理周期は早くなる傾向にあり、不正出血などの症状が出る場合があります。

●頻発月経とは

生理が安定している20~30代の女性で、生理周期が23日以内の場合は「頻発月経」の可能性があります。 原因によっては不妊につながる可能性があります。そして、月経の頻度が高いことで経血量が結果的に多くなり、貧血の症状をともなうことも。生理による貧血の対策については、「生理による貧血の治療法と予防」の記事でも紹介しています。

●頻発月経の原因について

頻発月経は、以下のような原因が考えられます。

・女性ホルモンバランスの乱れ
・黄体機能不全
・無排卵周期症
・妊娠による着床出血
・不正出血

■女性ホルモンバランスの乱れ
睡眠不足や過度なダイエット、ストレスなどによって体に負担がかかっていると、正常に女性ホルモンが分泌されなくなり、頻発月経や過少月経、月経不順になることがあります。

■黄体機能不全
黄体機能不全とは女性ホルモンの分泌が上手く行かず、排卵後に厚くなるはずの子宮内膜が変化しなかったり、完全に剥がれ落ちずにダラダラと出血が続いたり、不正出血が出る状態です。

■無排卵周期症
無排卵性周期症は、生理のような出血はあるものの排卵をしていない状態です。生理周期が不順になります。

■妊娠による着床出血
生理予定日の1週間前から生理予定日あたりで少量の出血が数日あった場合、着床出血の可能性があります。妊娠の可能性がある場合は、生理予定日1週間後以降に妊娠検査薬で調べるか、産婦人科を受診するなどしましょう。

■不正出血
生理が早くきたのではなく、何らかの原因で不正出血が出ている可能性があります。膣炎や子宮がん(子宮頸がん・子宮体がん)、子宮頸管ポリープ、子宮筋腫などの病気が原因の場合も。

●頻発月経の治療について

頻発月経はさまざまな要因が考えられます。不妊につながったり、病気が原因だったりする可能性もありますので、一度婦人科で相談してみましょう。婦人科では、基礎体温の測定をして排卵があるかを確認し、問診やホルモンの血液検査などを行って、原因に応じた治療を行います。女性ホルモンバランスの乱れが原因の場合は、女性ホルモン剤の投与や低用量ピルなどの治療が行われます。また、子宮に関連する病気が原因で頻発月経になっている場合は、病気を治療する必要があります。外科的療法では病変部のみを取り除く方法と、子宮や卵巣を摘出する方法があり、妊娠の希望や再発のリスクなどを考慮して、治療方針を決めていきます。
※頻発月経は思春期や更年期に起きやすい症状です。しかし、生理が安定している20~30代の女性で生理周期が短い場合は、さまざまな原因が考えられます。不妊につながったり、病気が原因だったりすることもあるので、婦人科への相談をおすすめします。

生理の経血が少ないと不妊につながる可能性も。過少月経の原因

●正常な生理日数、経血量

正常な生理は日数が8日以下で、出血量は1周期あたり総出血量が20~140mlとされています。思春期や更年期の女性の場合はホルモンバランスが揺らぎやすく、正常範囲内に収まらないこともあります。しかし、生理が安定している20~30代の女性で、生理の出血量が20ml以下の場合は「過少月経」の可能性があります。目安としては、ナプキンが必要ないくらい出血量が少ない状態です。また、これまでは生理の期間や出血量が正常範囲だったのに、急に短くなったりした場合は注意が必要です。

●過少月経の原因について

過少月経は、以下のような原因が考えられます。
・女性ホルモンバランスの乱れ
・無排卵周期症
・黄体機能不全
・甲状腺機能異常
・婦人科系の疾患(子宮の奇形、内膜異常など)
・妊娠による着床出血

■女性ホルモンバランスの乱れ
過度なダイエットやストレス、睡眠不足などによって、正常に女性ホルモンが分泌されなくなり、月経不順・不正出血・過少月経になることがあります。

■無排卵周期症
無排卵性周期症は、月経のような出血はあるものの排卵をともなっていない状態のことです。月経周期が不順で、月経期間が短くなり出血量が少ないこともあります。

■黄体機能不全
黄体機能不全とは、女性ホルモンの分泌不全により排卵後も子宮内膜が変化しなかったり、完全に剥がれ落ちずにダラダラと出血が続いたり不正出血が出る状態です。

■甲状腺機能異常
甲状腺の機能異常がありホルモンバランスが崩れている状態です。月経異常や不妊、流産・早産の原因になることもあります。

■婦人科系の疾患(子宮の奇形、内膜の異常など)
先天的な子宮の奇形や子宮内膜の異常があると、女性ホルモンの分泌が行われているのに子宮内膜が厚くならず、生理日数が短くなったり出血量が減ったりすることもあります。

■妊娠による着床出血
生理予定日の1週間前から生理予定日ごろに、少量の出血が数日あった場合、着床出血の可能性があります。着床出血かどうかの自己判断は難しいため、妊娠の可能性がある場合は、生理予定日1週間後以降に妊娠検査薬で調べたり、産婦人科を受診したりして確認してみましょう。

●過少月経の治療法や対処法

生理の出血が少ないからと言って必ず治療が必要とは限りません。しかし、原因によっては治療が必要です。女性ホルモンバランスの乱れが原因の場合は、女性ホルモン剤の投与や低用量ピルなどの治療が行われます。
※生理の経血量が少ないと、生理の不快感が少なくていいと思う人もいるかも知れません。ただ、なにかしらの病気が原因の可能性もあります。更年期ではないのに、急に経血量が少ない生理が続く場合は婦人科で相談するようにしてください。