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婦人科系疾患

子宮頸がんの症状、原因は?

●子宮頸がんはどんな病気?

子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部という部分に発生するがんです。膣の奥に発生するために自分では発見しにくく、がん検診や婦人科の検査などをしないと見つかりにくい病気です。日本では、年間約11,000人が子宮頸がんと診断されます。早期に発見できれば手術などで完治を目指しやすい病気ですが、進行してしまうと以下のような症状が出ます。

・子宮・膀胱・腸へが浸潤することで不正出血・血尿・血便
・骨盤の中のリンパ節への転移で足のむくみ
・血管やリンパ管を通って、ほかの臓器へ転移

●子宮頸がんになると、不正出血や、おりものの変化が起きる

子宮頸がんになる前には、「細胞の異形成」というがんの手前の状態があります。異形成の状態では、おりものや性器出血などの異常や痛みがないため、検診や検査を受けないと発見が難しいです。子宮頸がんが進行してくると、生理のとき以外に不正出血が起きたりします。そして、おりものが濃い茶色や膿のようになったり、水っぽくなったり、粘液が多く出てきたりします。さらに症状が進むと、下腹部や腰の痛みを感じたり、尿や便に血が混じったりすることも。症状に心当たりがある場合は、すぐに婦人科を受診しましょう。

●子宮頸がんのおもな原因は、HPVの感染

子宮頸がんのおもな原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV:HumanPapillomavirus)の感染だと言われています。HPVは性交渉により男女ともに感染し、女性は一生に一度は感染すると言われているほどで、珍しいものではありません。多くの方はHPVに感染したとしても免疫機能が働き体から排除されることがほとんどです。しかし、一部の方はHPVに感染している状態が長期間続き、その中で子宮頸がんの前がん病変(異形成)や子宮頸がんになると言われています。

●子宮頸がんの対策は、検診とHPVワクチン

子宮頸がんに対して私たちができることは、検診とHPVワクチンの2つです。

・子宮頸がんの検診
20歳から69歳の女性は、2年に1回の頻度で、子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。検診の内容は、子宮頸部の細胞診です。子宮頸部の細胞診では、子宮頸部をブラシなどで擦って細胞を集め、顕微鏡で検査を行います。問診では、不正出血の有無、妊娠および分娩歴、月経の症状、過去の検診受診歴などを確認します。もし、検査の結果が「要精密検査」だった場合は、必ず婦人科で精密検査を受けてください。住民健診では、自治体が費用の多くを補助しているので、安く受けられることが多いです。検診の対象年齢や受けられる場所については、お住まいの市区町村に問い合わせてみてください。

・HPVワクチン
子宮頸がんの発症を防ぐHPVワクチンが開発され、現在では世界70か国以上で接種が行われています。HPVワクチンは、性交渉を経験する前の10歳代前半での接種が推奨されていて、子宮頸がんの60~70%を予防でき、肛門がんや喉のがんの予防効果もあります。日本では3回接種することがすすめられており、12~16歳の女性は無料で接種できますので、お住まいの市区町村役場へ問い合わせてみてください。(12~16歳の女性以外の方が接種する場合は自費になるため約2~4万円/回の費用がかかります)。

厚生労働省は、HPVワクチンの接種を逃した方のための接種(キャッチアップ接種)の実施を開始することを発表しました。次の2つの条件を満たす人が、無料接種の対象となります。
1.平成9年度~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女性
2.過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない。
詳しくは「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~(厚生労働省)」をご確認ください。

●子宮頸がんの治療法

子宮頸がんになった場合のおもな治療法は、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤)の3種類です。がんの進行状況や、患者本人が将来妊娠を希望するか否か、基礎疾患の状況などによって、治療方法が異なります。医師と相談しながら治療法を選択します。子宮頸がんは、初期だと自覚症状がないことがほとんどです。HPVワクチンの接種と2年に1回の子宮頸がん検診を受けて、体のチェックをしていきましょう。

高度異形成は子宮頸がんに発展する前の状態。症状や治療法を解説

●高度異形成の症状や原因

子宮頸がんになる前に「細胞の異形成」という状態があり、軽度異形成、中度異形成、高度異形成と3つのステージがあります。高度異形成のおもな原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染だと言われています。HPVは性交渉により男女ともに感染しますが、多くの方はHPVに感染したとしても免疫機能が働いて、体から排除されることがほとんどです。しかし、一部の方がHPVに感染している状態が長期間続くことによって、異形成になると言われています。異形成の状態では、おりものや性器出血などの異常や痛みがないため、検診や検査を受けないと発見が難しいです。軽度~中度の場合は自然治癒することもありますが、高度異形成の場合は治療が必要です。

●高度異形成の治療法

高度異形成と診断された場合に有効な治療法は手術です。手術には以下のような方法があります。

1.円錐切除術
円錐切除術は子宮頸部の一部を円錐状に切除する方法です。病変部を広範囲に切除するため、がんの広がりを調べることができます。しかし、がんが進行していて、血管やリンパ管などに浸潤している状態の場合、根治するための手術(子宮全摘術など)が別途必要です。また、切除することで子宮頸部が短くなるため、妊娠した際に切迫早産や流産になる可能性が少し高くなります。

2.レーザー蒸散術
レーザー蒸散術は、子宮頸部にレーザーを当てて病変部を焼く治療法で、20分ほどで処置が終わります。子宮頸部を切除しないため子宮頸部の長さが維持でき、妊娠した際の切迫早産や流産のリスクを抑えられますが、再発のリスクがあり、通院でのフォローアップが長期間必要となります。円錐切除術やレーザー蒸散術後は、治療後1ヶ月程度は水っぽいおりものが続きます。その間性行為は控えてください。

3.子宮全摘手術
高齢の女性や閉経を迎えた女性の場合、子宮の摘出手術を行うこともあります。子宮を摘出するため、病変部の取り残しや再発の可能性が極めて低いです。一方、妊娠や出産ができなくなります。

●高度異形成に早く気づくには、子宮頸がん検診を受けよう

異形成は、おりものや性器出血などの症状がないため、定期的に子宮がん検診を受診して確認することが重要です。異形成が子宮頸がんに発展するには5~10年程度かかると言われています。そのため、一度子宮頸がん検診を受けたら大丈夫というわけではなく、定期的な検査が重要です。

●子宮頸がん検診の内容

20歳から69歳の女性は、2年に1回の頻度で、子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。検診の内容は、子宮頸部の細胞診です。具体的には、子宮頸部をブラシなどで擦って細胞を集めて、顕微鏡で検査します。問診では、不正出血の有無、妊娠および分娩歴、月経の症状、過去の検診受診歴などを確認します。もし、検査の結果が「要精密検査」だった場合は、必ず婦人科で精密検査を受けてください。住民健診では自治体が費用の多くを補助しているので、安く受けられることが多いです。検診の対象年齢や検診場所などは、お住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。

子宮内膜症の原因と症状、治療法について。生理痛が重い人は要チェック

●子宮内膜症とは

子宮内膜症の症状は、病巣ができた場所によっても異なりますが、月経痛や下腹部痛が強いことが特徴です。毎月の生理のたびに炎症を起こしてしまい、症状が少しずつ進行するため、痛みが増していきます。詳しい原因ははっきりと解明されていませんが、生理の血が何らかの理由で卵管からお腹の中に逆流し、それにのって子宮内膜の細胞が移動することが原因だと言われています。最近では、少子化や晩婚化が進んだことで、閉経までに経験する生理回数が増加しています。そのため、子宮内膜症にかかる女性も増加傾向にあります。発症率は、25~34歳がピークとされています。

●子宮内膜症はいろいろな場所に発生します

腹膜とは、お腹の中を覆っている薄い膜を言います。この腹膜に子宮内膜症が発生すると、炎症によって腸や卵巣がくっつき(癒着)、生理のときにお腹が痛くなることがあります。

●子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)

卵巣子宮内膜症は、卵巣に発生した子宮内膜症のことで、卵巣の中に月経血成分が溜まり大きく腫れていきます(嚢胞:のうほう)。嚢胞が破裂すると激しい痛みをともないます。また、子宮内膜症によって卵管が詰まると、不妊の原因になると考えられています。

●深部子宮内膜症(ダグラス窩・深在性子宮内膜症)

深部子宮内膜症は、子宮のうしろや骨盤内の底であるダグラス窩(か)に発生する子宮内膜症のことです。ダグラス窩には腸や膀胱など多くの臓器があるため、診断や治療が難しい病気とされています。

●稀少部位子宮内膜症

稀少部位子宮内膜症は、直腸や大腸、膀胱や肺などの場所に発生する子宮内膜症のことです。子宮内膜症の中でも極めて稀な病気で、発生個所によって症状が違います。尿管や膀胱に発生した場合は血尿や頻尿、大腸や小腸に発生した場合は下血や排便痛などの症状が見られることがあります。

●子宮内膜症によって引き起こされる症状

子宮内膜症の症状は発生部位によってさまざまですが、おもに下記の症状が挙げられます。

・生理痛、下腹部痛
頻度の高い症状に生理痛、下腹部痛があり、生理のたびに痛みが増していくのが子宮内膜症の特徴です。最初はただの生理痛と思って放っておいたけれど、そのうち痛みに耐えられずに婦人科を受診したら子宮内膜症だった、というケースがあります。
・性交痛、排便痛
ダグラス窩に病巣がある場合は、性交の際に膣の奥が痛むなどの性交痛や、排便痛が症状として現れる場合もあります。
・過多月経、レバー状のかたまりが出る
1時間以内にナプキンやパッドを変えないといけない、夜用のナプキンから血があふれてしまう、レバーのようなかたまりが出る、貧血の症状がある(動悸・息切れ・ふらつき)があるときは過多月経の可能性が高いです。子宮内膜症に似ている「子宮腺筋症」や、子宮筋腫でも生理の血が増えます。
・吐き気、嘔吐、下痢
子宮内膜症に限らず、生理中にも多く見られる症状で、子宮を収縮させるプロスタグランジンの作用で、胃や腸が収縮して、吐き気や嘔吐、下痢などの症状を引き起こすことがあります。
・不妊症卵巣
「卵巣チョコレート嚢胞」や卵管に病巣がある場合、卵管が詰まって卵子が移動できなかったり、炎症などにより卵巣の機能が低下したりすることで不妊症になると言われています。不妊症患者のうち25~50%が、子宮内膜症が原因で不妊症であることが判明しています。子宮内膜症にかかったからと言って、上記すべての症状が現れるわけではなく、いくつかが組み合わさっていることがほとんどです。上のような症状がある方や生理痛が強い方は、一度婦人科の診察をおすすめします。

●子宮内膜症の診断・治療法

子宮内膜症の診断方法や治療方法を紹介します。

■子宮内膜症の診断
子宮内膜症の診断は、問診、内診、超音波で行うのが一般的です。症状などを質問する問診を行った結果、子宮内膜症が疑われる場合は、内診でしこりの有無や圧痛、卵巣の腫れを確認します。さらに、超音波検査で卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)がないか確認します。MRIを使って卵巣やそのほかの場所に病巣がないか、悪性の初見はないかを確認します。そのほかにも血液検査で腫瘍マーカー(CA125)を調べる方法もあります(あくまで補助的な検査で、病気の初期だと陽性にならないこともあります)。診断と治療を同時に行う方法としては、実際にお腹の中を見る腹腔鏡があります。腹腔鏡によって病巣の状態を正確に確認し、同時に治療もできるという利点があります。

■子宮内膜症の治療
子宮内膜症の治療方法にはおもに薬物治療と手術の2種類です。一般的な子宮内膜症の治療の流れは以下です。

1.対症療法
痛みに対して鎮痛剤(ロキソニン、イブなど)や漢方(当帰芍薬散など)を使います。生理の痛みは我慢せずに痛み止めをしっかり使うことが大事です。

2.ホルモン療法
ホルモン療法には、以下のような方法があります。

・低用量ピル(ルナベル、ヤーズ、ジェミニーナなど)を使って生理痛や生理の量を減らす
・GnRHアゴニスト(リュープリン、ゾラデックス、スプレキュアなど)を使って生理を止める(偽閉経療法)
・黄体ホルモン(ディナゲストやデュファストン)で生理を止める
・ホルモン放出子宮内システム(ミレーナ)を入れて生理痛や生理の量を減らす

ホルモン療法は、すぐに妊娠を考えていない人向けの治療法です。すぐに妊娠を希望する場合は、手術で病巣を摘出する根本的治療が行われます。また、卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)のサイズが大きい場合は、将来的に悪性化し、卵巣がんに発展するリスクがあると言われており、腹腔鏡手術で病巣を摘出する治療法がすすめられます。最適な治療方法は、発生場所や妊娠を望むか望まないかで判断が異なりますが、適切に治療することで、子宮内膜症の症状は改善します。産婦人科医と相談しながら自分のライフスタイルに合わせて治療方法を考えていきましょう。