INNOVATION イノベーション

性教育

性教育ツール

●「性とからだとこころを知るカード」

株式会社フェリシモでは、未就学児から思春期までに知っておきたい体、性、心に関しての変化をカードにまとめた商品を販売しています。制作したきっかけは、「性の知識を子どもに伝える方法がわからない」という声が多かったからです。このカードを使うことで、子どもが疑問や興味を持ったタイミングで渡して知るきっかけにできるだけでなく、家庭で性の話ができるという親子関係構築も目的にしています。カードの監修は婦人科医、性科学者である宋美玄さんです。性の知識はタブーではなく、幸せな人生を歩むために必要なライフスキルであるとしているため、学校では教えてくれない正しい知識を早くから知っておくために使いやすいアイテムでしょう。

●生教育プロジェクト

「生教育プロジェクト」は、朝日小学生新聞、あすか製薬、電通の共同実施のプロジェクトです。子どもが正しい性教育の知識を持たないまま性被害に遭うケースが増加していることをきっかけに立ち上げました。小学4年生から性教育が始まってきますが、その中心となるのが思春期の体のみです。指導要領の範囲外になるため、教えられないことも多くありますが「性を学ぶことは、生きるを学ぶこと」をテーマに朝日小学生新聞へ広告を掲載し、各テーマに沿った学びができます。

●女子高生向けサイト

「Mint+teens」「Mint+teens」は、女子高生の年代を対象に女性の体や健康に関する情報を掲載しています。その中の取り組みとして、毎年17万部の保健体育の副教材を全国の高校へ無償で届けています。この教材は、男女の高校生が生理、避妊などを正しく学ぶための性教育関連資材です。思春期の体の変化、婦人科に行くタイミング、結婚、出産など性への意識や行動などについても書かれています。「Mint+teens」からでも内容が確認できるので、改めて学びたい方は読んでみましょう。

●はじめの生理BOX

フェムテックジャパン2022/フェムケアジャパン2022で、銅賞を受賞したのが「はじめの生理BOX」です。初めて生理が来たとき、「とうとう来たか」「痛いのが辛そう」などマイナスな印象になりがちです。また、生理であることを周囲に知られたくないことから隠したい気持ちになる女性もいます。しかし、「はじめの生理BOX」は、このような気分にならないように「楽しそう」という感覚であってほしいという想いから誕生しました。商品を開発した三上麗さんは、高校時代に性に関して嫌な経験をしたことがあり、性教育をポジティブにしてと言われ、難しかったそうです。しかし、性をフラットにするための方法を考えたときに、わくわくして興味を持ちやすいように意識されています。

性行為の基本知識として知っておきたい体の変化

●性行為の“基本知識”として知っておきたい「性反応」とは

性的な刺激を受けたときに体や心に起こる変化のことを言います。例えば、男性の場合「性器が反応する」、女性の場合「性器が濡れる」はイメージしやすいと思います。しかし、性反応にはこのほかにも「心拍数が上がる」などさまざまなものがあります。そして、性的な刺激を受けたときの反応や感じ方は人によって異なります。胸や首すじなど体の一部を愛撫されると、気持ちよさを感じたり、ゾクゾクしたりして濡れやすいという人もいれば、ただくすぐったいだけという人もいると思います。よりお互いが満足できるをするために、どこを気持ちいいと思うかや、性的興奮が高まるポイントをパートナーと共有するといいでしょう。

●性反応には4つの段階がある

性反応には男女ともに4つの段階があります。

①興奮期:性的興奮を覚える
興奮期は、性的刺激を受けて性的興奮を覚えるタイミングです。性器が充血し、女性は膣分泌液が多く分泌されます。ただし、女性器が濡れているからと言ってこの段階で挿入するのはまだ早いです。性的興奮を覚え始めたこのタイミングで挿入すると、女性が痛みを感じてしまう可能性があります。

②高原(平坦)期:性的興奮が高まる
性的興奮が続き高まると、高原期の段階に入ります。高原期では、お互いの呼吸数、心拍数、血圧が上がり、女性は膣の奥が広がり、子宮の位置が上がり、男性はカウパー腺から粘液が数滴分泌されます。高原期の段階にたどり着くには個人差があるため、その人に合った刺激を与えることが大切です。また、興奮期と高原期の違いがわからないということもあるでしょう。違いを見分ける一つの目安は、反応に集中できているかというところです。例えば、前戯のときに「明日までに仕事を終わらせないと…」など以外のことを考えてしまう場合、それはまだ高原期に入っていない興奮期の段階と言えます。

③オルガズム期
性的興奮が絶頂に高まり、いわゆる「イク」と呼ばれる段階がオルガズム期です。性器が0.8秒間隔で収縮し、呼吸数、心拍、血圧が上昇します。女性のオルガズムへの達成はバリエーションがあります。また、すべての女性がオルガズムに達するわけではなく、もし達していたとしても相手からはわかりにくい場合もあります。

④消退(回復)期
オルガズム期から平常に戻る段階が「消退(回復)期」です。膨らんだ性器はもとの大きさに戻り、心拍数や呼吸数も落ち着き、汗も引いていきます。また、女性の場合は、興奮期、高原期からオルガズム期を通らずに、消退(回復)期に至ることがあります。上記では、体的な性反応を記載していますが、性反応には個人差があり、必ずしもオルガズムに達しないといけないというわけではありません。正解はありません。体的な性反応を知ることで、二人がコミュニケーションをとるきっかけにしてください。

●自分と相手の性反応を知ろう

自分と相手の性反応だけでなく、性的刺激を受けて「気持ちいい」と感じるポイントを知ることは、お互いが満足できる行為につながります。自分と相手の好み・性反応を知るためには、以下のような方法があります。

①セルフプレジャーをしてみる
セルフプレジャーをすることで、自分が何に感じ、どこを気持ちいいと思うのか、また反対に感じないというスポットを知ることができます。最近では、「セルフプレジャーに抵抗がある」「やったことがないからわからない」という人でも試しやすい使い切りタイプのプレジャーグッズもあります。

②二人で伝え合う
自分が気持ちいいと感じるポイントを互いに伝え合ってみましょう。また「されて嫌だったこと」や「もっとこうしてほしい」などがあれば、それを伝え合うことも大切です。話し合ったことを実際に試してみたときも、途中で相手が痛みを感じていないか、気持ちいいと感じているかなど、確認していくことが大切です。
※性反応は人によって異なり、環境やタイミング、相手によってもさまざまに変化します。性行為のときのお互いの体の変化を知り、コミュニケーションをとることで、パートナーと一緒に互いが心地良くなる二人の行為をつくり上げていきましょう。

知っておきたいおもな性病の症状

知っておきたいおもな性病の症状

特定のパートナーとしか性行為をしていなくても、性感染症に絶対にかからないとは言いきれません。自覚症状がないまま、お互いにうつしてしまう可能性があるからです。

●性感染症とは

性感染症とは、性行為(やオーラルなども含む)で感染する病気のことで、昔は「性病」と呼ばれていました。症状の出ない潜伏期間がある場合もあり、感染に気づかないまま病気が進行したり、知らずにほかの人にうつしたりする可能性があります。

●おもな性感染症と症状

今回は代表的な性感染症とその症状を説明します。これらの症状に当てはまる場合は感染の疑いがありますので、早めに病院(女性は婦人科、男性は泌尿器科)を受診しましょう。

・クラミジア感染症
クラミジア感染症は、性器および喉の粘膜にクラミジア・トラコマティスという病原菌が感染する病気です。男女ともに症状がほとんどないため、感染を知らずにうつしてしまう可能性があります。
【クラミジア感染症の症状】
女性はおりものの増加、不正出血、下腹部の痛みや性交痛などの症状が出ることがありますが、まったく症状がないことも多いです。男性は尿道のかゆみや排尿痛、尿道からの膿、精巣上体の腫れ、発熱などの症状が出ることがあります。 感染に気づかず放置していると、子宮から卵巣や卵管、骨盤などに感染が進行し、卵巣炎や卵管炎、骨盤内炎症性疾患を発症する可能性があります。これらの疾患は子宮外妊娠や不妊症の原因になることもあります。

・膣カンジダ
膣カンジダは、膣内にいる常在菌であるカンジダが異常に増えてしまった状態です。女性の役20%が経験していて、再発しやすいことが特徴です。膣カンジダは性感染症ではなく、女性であれば誰もがなりやすい病気です。性行為による感染もありますが、性行為に関係なく風邪や疲労、ストレスなどで体の抵抗力が弱まったり、妊娠や出産、生理などで常在菌のバランスが崩れたりすることで発症することもあります。
【膣カンジダの症状】
女性は性器周辺の強いかゆみ、白いカッテージチーズのようなおりものが出る、性交痛や排尿痛などの症状が現れます。男性は症状が出ることが少ないですが、亀頭が赤くただれる、かゆみなどの症状が出る人もいます。

・性器ヘルペス
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスに感染することで、性器やその周辺に小さな潰瘍や水泡ができる病気です。性行為を経験している人なら誰でも感染の可能性があり、過去に感染したものがあとになってぶり返すこもあります。女性の30~50代や高齢の患者さんが増加傾向です。
【性器ヘルペスの症状】
性器やその周辺に痛みをともなう小さなポツポツができたあと、水泡のようなものが多数できます。そのほか、38度以上の発熱や足の付け根のリンパが腫れる、強い排尿痛などの症状が出ることも。 初めての感染では、男女ともに激痛に見舞われることがあります。男性より女性の発症率が高く、症状も重くなりやすいです。ヘルペスウイルスが一度体内に入ると、完全に排除することができません。症状を抑えることはできますが、免疫力が弱ったときなどに再発を繰り返しやすいです。

・尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスに感染することで発症します。ヒトパピローマウイルスは100種類以上が確認されていて、尖圭コンジローマを引き起こすウイルスは低リスク型です。
【尖圭コンジローマの症状】
痛みやかゆみなどはなく、性器や肛門周辺にトゲトゲしたイボのような腫瘍ができます。腫瘍の色は白、ピンク、茶色、黒などさまざまで、2~3ミリ程度の大きさです。鶏のとさかやカリフラワー、乳頭のような形をしています。 そのほかには、性器の違和感、おりものの増加などがありますが、症状が軽いため感染に気づかない人もいます。

・膣トリコモナス症
膣トリコモナス症とは、膣や子宮頸管、尿路、前立腺などに、膣トリコモナス原虫という微生物が入り込むことで感染する病気です。性行為以外でも、下着・タオル・便器・浴槽などからでも感染することがあります。
【膣トリコモナス症の症状】
男性は症状が軽く、女性は20~50%が自覚症状を感じないため、感染に気づきにくいです。女性に症状が現れる場合は、悪臭が強いあわ状のおりものが増加し、性器に強いかゆみや痛みを感じます。

・淋病
淋病は性器および喉の粘膜に淋菌と呼ばれる菌が感染する病気です。症状がないことも多いですが、放置しておくと子宮や卵管に炎症を引き起こし、不妊の原因になることもあります。
【淋病の症状】
男性は排尿痛や膿が出るなど重い症状が出る一方、女性はほとんど症状が出ないことが特徴です。

・梅毒
梅毒は、梅毒トレポネーマという病原菌が感染して起こります。性行為やオーラルだけでなく、口に病変部があればキスでも感染します。
【梅毒の症状】
症状は感染から数週間後、数ヶ月後、数年後で変化します。梅毒はほかの病気と症状が似ているため、検査をしないと診断が難しいと言われています。最初は皮膚疾患のような症状から始まり、重症化すると死に至る危険性もあります。

・エイズ(HIV)
エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで免疫機能が低下してしまい、細菌やカビ、ウイルス感染症や悪性腫瘍などの病気にかかってしまった状態のことを指します。エイズは、昔は不治の病として恐れられていましたが、医療の発展や治療薬の普及によって命を落とす人は減っています。
【HIV感染症の症状】
HIVに感染したからと言ってすぐにエイズを発症するわけではなく、急性期、無症候期、エイズ発症期の3段階があります。

女性の生殖器の構造と役割

女性の生殖器の構造と役割

自分の体の一部なのに知らない女性が多い?他人と比べることもないから、自分が正常かどうかもわからない。…これを機会に、ぜひ自分の体のことを知ってください。自分の性器を知ることは体の異変に気づくことができ、トラブルの早期発見につながります。

●女性性器の基本的構造や役割

女性の生殖器は、体外にある「外性器」と体内にある「内性器」の2つに分けられます。

・外性器
恥丘(ちきゅう)、大陰唇(だいいんしん)、小陰唇(しょういんしん)、陰核(いんかく)、膣口(ちつこう)、外尿道口(がいにょうどうこう)、会陰(えいん)などにより構成されています。外性器は、小児期、性成熟期、老年期といった年齢によって変化をしていきます。また、外性器の色やサイズ、大きさは人それぞれ。どの性器にも、正解・不正解の見た目はありません。

・恥丘(ちきゅう)
恥丘は恥骨の前方(お腹側)にあり、思春期以降に反応が生じるところです。

・大陰唇(だいいんしん)
大陰唇は、外性器の一番外側の左右にある厚い皮膚のところで、男性の陰嚢に相当します。脂肪組織でできており、陰核や膣口、尿道口を保護しています。性的に興奮したり妊娠したりすると、充血してふっくらとします。 また、大陰唇は小陰唇より大きい場合が多いですが、小陰唇の方が大きいこともあります。大陰唇の色も、ピンク色や茶色など、さまざまなバリエーションがあり、どれも間違いではありません。

・小陰唇(しょういんしん)
大陰唇の内側にある皮膚のヒダです。陰核から会陰(えいん)まで伸びており、膣口や尿道口を保護しています。大陰唇と同様に、性的に興奮すると充血して膨らみます。 小陰唇の形やサイズ、色も人それぞれです。小陰唇が左右対称の人もいれば、大陰唇から見えない人もいます。

・陰核(いんかく)
陰核は男性の陰茎海綿体(いんけいかいめんたい)に相当します。左右の小陰唇が前方で融合する部分にあります。 陰核の皮下は知覚神経と血管が豊富で、陰核は性的刺激により膨らみ拡張します。

・外尿道口(がいにょうどうこう)
外尿道口は、陰核の下にあり、尿の出口です。

・膣口(ちつこう)
膣口は、外尿道口の下にあり、部分的またはかなりの部分が処女膜で覆われています。 膣口の奥にある外から見えない部分は、性行為のときに男性器を挿入したり、月経のときに経血が流れ出たり、胎児が生まれてくるところです。

・会陰(えいん)
会陰は、膣口と肛門の間の部分を指し、この部分の皮膚は薄いことが特徴です。

・内性器
内性器は、膣(ちつ)、子宮(しきゅう)、卵管(らんかん)、卵巣(らんそう)から構成されています。

・膣(ちつ)
膣は、外性器と子宮開口部の子宮頸部をつなぐ長さ7~8cmほどの管を指します。膣の前方には膀胱や尿道があり、後方には直腸と肛門があります。出産時、膣は胎児の通る産道の役割を果たします。また、月経時には、経血が膣を通ることで膣口から外に排出されます。さらに、膣では常に膣分泌液(粘液)が分泌されており、この膣分泌液は、膣のうるおいを保ち、膣の自浄作用を担うことで細菌から守る役割があります。

・子宮(しきゅう)
子宮は、骨盤内腔のほぼ中央に位置する器官です。形は、扁平(へんぺい)な西洋ナシのような形をしており、膣の上端と接続している子宮頸部と、その奥の子宮体部に分けられ、内側は子宮内膜という粘膜で覆われています。 子宮は、妊娠時、胎児を育てる部屋にあたります。 また、女性の生殖器は毎月排卵が起こります。排卵が起こると、子宮の内側にある子宮内膜が厚くなることで、受精卵を受け止める準備を始めます。生理前になると子宮内膜は厚さ約1cmまで厚くなりますが、妊娠しなかった場合、新しい内膜がつくられやすいように古い内膜は壊され、溶けて血液と一緒に剥がれ落ち、月経が始まります。

・卵管(らんかん)
卵管は、子宮のうえの部分の両側から伸びる10~12cmの器官を指します。 排卵日になると、卵巣から卵子が排出され、卵子は卵管を移動しながら子宮の方へむかっていきます。その後膨大部というところで受精し、受精卵ができます。

・卵巣
卵巣は、子宮の両側にあり、親指ぐらいの大きさでアーモンドのような形をしています。 卵巣の中には、「卵胞」のもととなる「原始卵胞」という細胞があります。女性は、この卵巣の中に、「卵胞」のもと(原始卵胞)を約200万個持って生まれてくると言われています。そして体が成熟し妊娠可能な状態になると、女性ホルモンの働きにより一定のサイクルで、「卵胞」が排出されるようになり、排卵が起こります。